店舗運営・経営ナレッジ

常識を覆す未来の営業戦略 会員管理データの活用法

常識を覆す未来の営業戦略 会員管理データの活用法
文=人首雄介(シーズリサーチ)

本記事は『Amusement Business Answers』(2025 WINTER Vo.1 No.1)に掲載中です。

みなさんは、異業種で営業データだけを見て経営している企業を思いつきますか?パチンコ業界の売上は減少しているといっても約15兆円と大きな業界にも関わらず、営業戦略の手法においては時代に大きく取り残されています。言い換えると、パチンコ業界で当たり前となっている戦略(常識)は、異業種ではすでに過去のものとなっているのです。例えば、パチンコ業界の常識である一例を見ていきましょう。

ホールコンピュータのデータは、稼働・売上・粗利を軸に遊技機性能に特化しています。仮に、自動車業界に置き換えると、出荷台数・売上・粗利と車のトルクや最高スピードなど車性能を見ていることに相当します。また、パチンコ業界の頭取りデータについては、店舗・機種毎の集客人数だけのデータに過ぎず、「どのような人がどの程度遊技しているのか」までは把握していないのが現状です。業界が活況な時はそれで良かったのも事実ですが、市場規模・遊技人口が減少に転じている状況下では、「どのような客層がどのような使い方をしているのか」などの顧客のニーズを知ってそれに添った営業手法を模索し実践する、「マーケットイン」と言われるアプローチが異業種では常識となっています。

ホールコンピュータのデータや頭取りデータを否定するつもりはありません。遊技機データは、データを見る時の軸であり基本として必要なデータです。しかし、それだけを見て判断し通用したのは10年以上前までと言えるでしょう。では、パチンコ業界にはそのように顧客ニーズを補完できるようなデータは存在しないのでしょうか?答えとしては、「以前からデータはあります」です。しかし、なぜかあまり有効活用されていません。

そのデータとは、皆様も馴染みのあるユニット側から取得できる会員の管理データです。最近の会員管理データは会員の性年代属性データはもちろんのこと、分析時に有益となる様々なデータを取得することができます。ここで、どのようなデータ(機能)を把握すると、営業戦略のヒントになり得るのかをご紹介します。

遊技機の客構成

従来は、終日の稼働や売上の最終データしか知ることが出来ませんでした。しかし、会員管理データでは、遊技機の稼働がどのようなお客様で構成されているのか、それらを詳しく数字で把握することができます。

自店の客構成

機種ごとにお客様の構成がわかるということは、自店舗のお客様の層や特徴の把握ができ、当然全国のデータと比較することも出来ますので、自店のポジショニングを知ることも可能となります。例えば、下記のようなケースです。
①自店の客数は多いが、1人あたりの売上が低い特徴がある
②自店は年配層が多く、1人あたりの遊技時間が長い
ここから自店の特徴(強み・弱み)を知ることができます。また、イベントを実施する際にも自店の特徴を生かした、効果的な施策の立案も実施戦略の要素として検討することができます。

回遊データ(相関データ)

対象の機種を軸として、お客様がどの台と行き来しているか相関関係(傾向)をみることができます。回遊している機種がわかれば、店内の最適なレイアウト(遊技機の配置)の構想にも活用できます。また、台入替の際にもお客様の好む要素を把握することにより、精度の高い導入・撤去台の選択が可能になります。さらに遊技客の遊技履歴を把握することで、来店して一番初めに遊技している台の確認をすると、〈初遊技率の高い台=その台を目的に来店している〉機種がわかり、リピート化・固定化施策として重要な指標となります。

その他各種データ

お客様が遊技する上で、遊技時間が長い機種や、勝率が高い機種等を見ると、どの台を粘って遊技しているのか、本当の意味での勝ち体験率を向上させるにはどのような台を導入すればよいのか等、顧客の志向を感覚ではなく、全国や自店のデータから把握することができます。その他にも、常連客や台の売却価格を考慮した台入替、イベント検証など今後の店舗運営(営業戦略)で役立つ指標は多くあります。パチンコ店向けの具体的なサービスとしては、グローリーナスカ社の「遊動」やマースエンジニアリング社の「MSD」等がそれにあたります。ご興味ある方は一度、両社が提供しているサービスをご確認されることをおすすめします。

最後になりますが、現在のパチンコ業界は生き残りをかけた厳しい時代になっています。その背景のひとつには、遊技人口の減少があげられます。商圏内競合他店との限られたお客様を互いに集客しなければいけない状況となり、その競争は今後激化していくことを考えると、他店と同じ手法、同じ戦略では、その競争に勝ち抜くことは難しいでしょう。

時代とともにお客様の情報取得のツールも以前のメインであったチラシからWeb(SNS等)に移行しており、お客様のツールひとつとっても常に変化しています。ひとつの概念にとらわれず、店舗運営においても、さまざまな情報を戦略の要素として取得・活用し、自店の営業戦略をぜひアップデートしてください。

弊社シーズリサーチでは、現在の難しい業界状況の中で、先ほどの遊技者の参加人口をはじめとする業界基礎調査や、法人単位・個店単位でのブランド調査や来店客調査など幅広いサービスをご提供しております。企業・店舗を第三者の目線から投資対効果・業務効率など調査から見出し適正な営業・経営へと役立てていただくご支援を行っておりますので、お気軽にご相談ください。

株式会社シーズ シーズリサーチ
東京都台東区東上野1丁目-26-2オーラムビル2階
HP https://sees-research.com/company/
TEL 03-5846-8110
FAX 03-6806-0563
MAIL research@sees.co.jp

この記事は役に立ちましたか?

参考になりましたら、下のボタンで教えてください。

コメント

この記事へのコメントはありません。

日本語が含まれないコメントは表示できません。

関連記事

新着記事
会員限定
おすすめ
PAGE TOP
ログイン 会員登録
会員登録