店舗運営・経営ナレッジ

営業力を高めるカギは 生産性の高い会議にある

営業力を高めるカギは 生産性の高い会議にある

営業力向上コンサルタント
フリコユラス代表取締役
吉田真晃

本記事は『Amusement Business Answers』(2025 WINTER Vo.1 No.1)に掲載中です。

いまや関東を代表する法人のひとつとなった某ホール企業で、関東進出時の営業部長を務めた後、「営業力向上」を支援するコンサルティング会社を立ち上げた吉田真晃氏。吉田氏は営業力をどのように培ったのか。ホールの生存競争が激化した今、業績を向上させる店長を育成するヒントがあるはずだ。〔文中敬称略〕


取材=田中剛(本誌エディター)/ text & photo by Tanaka Tsuyoshi

─フリコユラスの支援のスタイルを簡単に教えてください。
吉田 ホール様にご訪問して、店長や店舗幹部の方々を対象とした実践型のマーケティング研修などをさせていただいております。私が方向性を示すコンサルティングというよりも、月に1回の勉強会のような形です。世の中トレンドを把握していただき、それを自店商圏に落とし込み、具体的な〈行動と目標〉を一緒に考えていきます。

─吉田さんといえばH社で営業部長を務め、関東進出を成功させました。ご自身が店長として働かれていた頃は、営業力を高める手法をどのように身に着けたのでしょう?会社に特別なプログラムがあったのでしょうか?
吉田 会社の方針もあり、始業前の1時間はインプットの時間にあてていました。日経新聞、日経流通新聞、パチンコ業界誌すべて、日経ビジネスに目を通していました。異業種の業界誌、たとえば『商業界』や『販促会議』なども読んでいました。多くの店長が同様のことをしていたはずです。それらを読み漁り、世の流れやトレンドを把握することが仕事の一部でした。その会社じたいが異業種から学ぶ文化をもっていたことは、いま思えばとてもありがたい環境でした。

─その会社では、社員の方々が異業種の店舗や複合商業施設に視察に出かけることもあると聞きました。
吉田 雑誌で情報を仕入れるだけでなく、実際に家電量販店などを視察に回り、売り場や接客接遇を観察したりしました。売上や営業利益を伸ばしている強者を視察して、もし競合だったらどのように攻略するかをディスカッションしました。貴重な体験でした。いま思えばスーツ姿の男たちが難しい顔で家電量販店を徘徊している姿はなかなか奇妙だったように思います(笑)。

─異業種の話でいえば、吉田さんはフォロワー2万人をもつ〈フード系インフルエンサー〉という一面もありますよね。
吉田 独立起業し、さまざまな地域のホール企業様からマーケティング研修に呼んでいただくようになりました。出張が多くなり、その地域のご当地グルメを楽しむようになった頃、「パチンコ店で学んだマーケティングを駆使してSNSに取り組んだらどうなるのだろう?」と思いつきました。一種の実験です。仮説を立てて投稿し、見込みユーザーにアプローチし、それを検証し、軌道修正する……といった具合に、かなり戦略的にInstagramに取り組み、ご当地グルメをUPし続けたところ、約2年でフォロワーが2万人を超えインフルエンサーと呼ばれるようになりました。少し遅れて始めた食べログでも、影響力が高い方に贈られる〈レビュアーアワード〉を3年連続受賞できました。

マーケティングの知見を活かしたSNS運用

─いまでは飲食店からSNSによる集客について相談されることもあるのですよね?
吉田 はい。お店の魅力を発信するお手伝いのお仕事もいただくようになりました。ほとんどのお店には既存客がいて、お店の何らかの要素を魅力に感じて来店しているわけです。それはサービスかもしれないしある商品かもしれません。私の手法は、「自分のお店に関心を持ってもらえそうな方を探し出し、こちらからアプローチをする」というものです。それを愚直に繰り返すことで、潜在顧客層にお店の魅力を伝達し来店を促します。これはパチンコホール営業でチラシやSNS広告を打つ感覚と同じなのです。

業績UPのカギは「選択と集中」

─お店は多くの要素で成り立っていますが、その中の何を伝えるかをまず絞り込んで、それを価値と感じる方々に向けて発信するということですね。
吉田 業績を上げている店長は、シンプルにいえば「選択と集中」をおこなっているのです。仮に、全体的に集客が難しい時期(閑散期)でも、セグメントを絞れば稼働を上げられるポイントは存在します。その絞ったセグメントを「〇〇発まで上げる」「自社シェアを2カ月後に〇%まで上げる」と、本気で上げる計画を立てている店長は強いです。「店全体で稼働を上げる」とか「低迷している4円パチンコ部門の回復」といったボヤっとした目標設定では、稼働を上げるため戦略、戦術、施策もすべてボヤっとしたものになります。選択と集中は、稼働を上げたい機種カテゴリーだけでなく、集客したい客層や時間帯についても言えます。閑散期の遊技人口が少なくなる時期こそこの考え方が重要です。

─絞り込んだ後には、どのように戦略を組み立てるのでしょう?
吉田 例えば、「夜の時間帯の稼働を上げる」と選択した場合、夜のお客様が来店する理由を考えます。ビッグデータを見ると、夜の時間に稼働率が高い機種として、パチスロのジャグラーシリーズの需要が高いことがわかります。夜に入店されるお客様の特徴はなんでしょう。「サラリーマンが仕事帰りにフラッと吸い込まれる」という仮説がある場合、朝から掲出しっぱなしになっている新台入替のポスターよりも、夜から入店するお客様に振り切って作ったポスターのほうが効果的です。消費者の気持ちに合わせて夜用のプロモーションを仕掛けるわけです。

夜間顧客層に特化したプロモーション事例

─店頭の掲示物を夜用のものに替えてしまうのですね。言われてみれば小売りや飲食店ではおこなわれていますね。
吉田 マクドナルドはコロナ期ぐらいから夜にボリューミーなバーガーや夜のお得なセットをプロモーションすることで、人々に「夜にマックを食べる」という習慣の刷り込みに成功しました。CMをご記憶の方もいると思いますが、芸人のナイツの塙さん扮するサラリーマンが夜に月見バーガーを食べに行ったら嫌いな同期と遭っちゃった。そのBGMが松田聖子さん。ターゲットを定めたエモーショナルマーケティングは衝撃的でした。稼働も同じで、上げようとするセグメントを定めなければ、狙うターゲットも具体的な戦略も明確化できません。あるご支援先では、同じく夜にジャグラーの稼働を上げるために、見込み客を想像し、エモーショナルに訴えかける“1日の終わりに輝きを”というフレーズのポスターを作りました。これを夜になってから店頭に掲出し、BGMもターゲット層向けにセレクトしたところ、ほとんどの実施店舗で結果が出ました。同業他社だけではなく成功している異業種にも視野を広げチャレンジしてみる“熱”に、お客様は引き寄せられるのだと思います。

営業会議の生産性を高める

─ホールの営業会議などの場では、翌月以降の数値目標を、「どのカテゴリーを伸ばす」「どのように伸ばす」ことで達成するか、ということまで共有されているものですか?
吉田 そこまでブレイクダウンしている営業会議は多くないと思います。私がご支援に入った場合、「来月のテーマはジャグラーの稼働を8000枚まで上げる」にとどまらず、「特に夜のシェアを商圏から獲得する。そのためには夜のお客様に響くコピー、デザイン、BGMを使用し20時の平均で45名を目指します」「そのためには競合A店の稼働数を25名から21名に減らす必要があるので、しっかりと調査の上、夜の外部販促もセットでおこないます」というレベルで店長が発言できるようになってもらうのが目標です。これだけ選択と集中および戦術がしっかりしていれば、たとえ目標未達であったとしても、次の一手がさらに具体的になることは言うまでもありません。

─見方を変えると、そういったレベルで目標を立てさせ議論するような営業会議の在り方が必要ですね。会議の生産性の高さも重要になるように思います。
吉田 私の思う「生産性の高い会議」とは、具体的な行動が多く立案される会議です。未達の原因、理由の探求はすべて〈過去〉の分析です。計画に対しての未達理由を説明することに時間の8割が使われている会議に出くわすケースは少なくありません。過去の分析は必要なことですが、店長がそこに多大なエネルギーを使い、幹部が未達の叱責に時間を割いていても業績は上がりません。必要なのは、分析を踏まえて、有効策をブラッシュアップすることです。顧客と一番接点の多い店舗から、増客のアイデアが産まれる会議が「生産性の高い会議」です。このシンプルな仕組みを作るのが、幹部の方々の大きな仕事だろうと思います。

─店舗の営業力を高めるには、幹部の方々の役割も大きいですね。
吉田 はい。店長の努力だけでは業績向上は難しいでしょう。私は、「計画は全チームに共有し、達成したら皆で喜ぶ」ということを大切にしています。それがモチベーションの高いチーム作りだと考えます。リーダーという言葉は、「lead(リード)する人」のことですが、leadには「相手が上手くできるように導くこと」という意味があります。店長は店舗のリーダーですが、営業部長は営業部門のリーダーです。店長たちを導くような、生産性の高い営業会議から、本気で業績を上げにいく店長が生まれ、そんな方々が次世代を担う人財に育つのだと思います。

─最後に、オーソドックスな研修の内容を少し詳しくお教えください。
吉田 営業力UPのための研修では、会議の質を高め、店長のやる気に火をつける、営業幹部が育つ研修をお手伝いさせていただいていますが、基本となるのは『営業力勉強会』で、月1回訪問で6回開催します(図表参照)。1回の所要時間は3時間程度で、勉強会終了後には個別に簡易な営業相談をお受けしています。この勉強会を受講していただいた企業様には別途、競合店対策、営業戦略、営業戦術の立案をサポートする『営業サポーティング』(月1回訪問、1回約3時間)もご提供しています。成果を出すために必要なのは、成果が上がる具体的なプランを立てて、それを実行することです。勉強会を通じて、成果を出すための有効な戦略から戦術の創造をお手伝いさせていただきます。

株式会社フリコユラス
https://furikoyurasu.com
東京都港区高輪4203MY高輪ビル2F
TEL 03-6277-3792
MAIL yoshida@furikoyurasu.com

この記事は役に立ちましたか?

参考になりましたら、下のボタンで教えてください。

コメント

この記事へのコメントはありません。

日本語が含まれないコメントは表示できません。

関連記事

新着記事
会員限定
おすすめ
PAGE TOP
ログイン 会員登録
会員登録