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世界最大のゲーミング産業見本市スロットのトレンドは「タメモノ」

世界最大のゲーミング産業見本市スロットのトレンドは「タメモノ」

本記事は『Amusement Business Answers』(2025 WINTER Vo.1 No.1)に掲載中です。

10月にラスベガスで開催されたGlobal Gaming Expo 2024(G2E)は、新型コロナ禍の影響は完全になくなり、出展社数及び来場者数は、最も盛況であった2019年と同等あるいはそれ以上の賑わいでした。ランドベースカジノ向け製品がメインのショーとはいえ、米国市場を鑑みてなのか、ヨーロッパのiGaming(オンラインスロット)企業のブースが前回以上に幅を利かせていました。

ハード、ソフトにおける今回の傾向ですが、スロットマシンのキャビネット(筐体)は、さすがにさらなる画面の大型化は見られず、ほとんどが近年主流の40~50インチの湾曲液晶を搭載。ソフトウェアについても前年までのトレンドが継続しており、革新的なゲームやシステムなどは見当たりませんでした。

ゲーム性のトレンドは継続して、業界関係者が「タメモノ」と呼ぶもの、それも3種類のものが全盛です。これらは、リールウインドウの上部に、3種類の何らかのタメモノ(宝箱などのジャックポット・プール)があり、それぞれのタメモノが各々違うフィーチャーが当たる役割を担っています。各社ともこのフォーマットを採用した上で何らかの新しい試みをしていました。

ボーナス発生契機は、特定シンボルが規定数以上リール上に停止するシンボルドリブン方式と、停止図柄の組み合わせと関係なく抽選を行うミステリー方式があります。「タメモノ」と表現されるのは、ミステリー方式を採用していて、ゲーム内部では、ひとつでも特殊図柄がリール上に停止した場合に抽選がおこなわれます。特定シンボルでのボーナスヒットと共存できゲーム性の幅を増やせます。特殊シンボルが停止するたびに画面上にコインが積まれていく、あるいは貯金箱が膨れていくので、見た目には「もうすぐ当たりそう」となります。しかし実際にはなかなか当たりません。これが、「プレイヤーはゲームをやめられない」という状況を作り出す仕組みとなっています。

ここ2年ほど、この“perceived persistent”(知覚された持続性)と呼ばれるカテゴリーが流行しており、これによる「なかなかやめられない」状況はプレイヤーに大きな負担を強いることになり、そろそろプレイヤーの疲弊が限界になってくるのではと私は危惧しています。

ゲーミング業界の常ではあるのですが、いったん稼働の良いゲームメカニズムが現れたら、その後数年は競合他社がこぞってそれを取り入れます。その結果、カジノに置いてあるゲームが似たり寄ったりになってしまいます。そのような状況の中でも、あえて言えば、3ポットの配置について新しい試みをしているIGT、ボーナスがビンゴ方式のゲームを発表したKONAMIが印象に残りました。

■菅沼正典(すがぬま・まさのり)
株式会社ReNeA JAPAN代表取締役社長、カジノ向けゲーム開発コンサルタント。名古屋大学卒業後、本田技術研究所を経て1994年にKONAMIに転職しアミューズメント業界へ。ラスベガス駐在を経て2010年にアリストクラートテクノロジーズに開発本部長として招聘され14年に代表取締役就任。17年にReNeA JAPANを設立し、現在に至る。

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