ホール経営トップの経営者魂
M&Aで規模拡大した今、全店地域一番店を目指す
代表取締役社長 岩谷和馬
アミューズグループとは
1993年に誕生した株式会社アミューズ(本社:大阪府吹田市)は2022年と23年に株式会社悠煇、株式会社デ・マッセをグループ会社として迎え、「アミューズグループ」として関東・関西地域でパチンコホール26店鋪(2024年10月時点)を運営する。2017年の10店舗から事業規模を急拡大。直近3年間の売上上昇率は163%で、2023年には売上1,000億円を達成した。
積極的なM&A、人材投資、営業力でスピード成長する同社は、さらに2024年4月に東京初出店となる「アミューズ浅草店」をオープン。3週連続で稼働率全国1位を獲得するなど、アミューズブランドは着々と認知され、その存在感は大きくなっている。そして、同年10月には株式会社悠煇と株式会社デ・マッセの融合法人株式会社DAYブレイクを設立するなど、未来に向けた体制を構築している。
入社して衝撃を受けた自社の離職率
私が入社した2012年は、東日本大震災の翌年ということやイベント広告規制などの影響もあって、営業面の課題はもちろんありましたが、それ以上に人がぽろぽろと辞めていくことにすごく違和感と危機感がありました。
当時の離職率は30%ほどでしたが、肌感覚としてはもっと悪かったです。何でこんなに人が辞めていくのか。現場へ積極的に介入するようにして気が付いたことは、人手不足により「自分たちのことで手一杯」で「人に関心を持つ余裕がない」という点でした。震災以降の業界に対する世間からのバッシングも、従業員のモチベーションを下げる一要素だったとも思います。
「人が辞める」ということに「何かおかしいのではないか」と問題視されることも少なく、「改善しよう」という動きも出てこない。そして、さらに人が辞めていく負のスパイラル。これは大いに反省する点で『そういう職場雰囲気』になっていたのです。
組織文化の大改革「人に関心がある組織へ」
「人に関心がある組織」に生まれ変わるために、改善に着手しましたが、具体的には「従業員の話しを徹底的に聞くこと」、「問題や課題、今後の方向性を共有すること」でした。スムーズなコミュニケーションを促進するためには「風通しの良い組織作り」が重要で、この考えは今でも私の信条になっています。そのうえで改善できるところからスピード感をもって対処する。「まだ問題もあるけど良い方向にむかっていくのではないか」と少しでも変化を体感してもらえるように。そして、1年が経過した頃から離職率が大幅に減少して8%近くまで改善されました。その要因として、労務体系を変えたという事もあるのですが、「従業員の意見をしっかりと聞いてくれる会社に変わってきた」という認識を持って頂けたことが大きかったと思います。社長の息子が入社し、旧態依然の保守傾向から、生まれ変わろうとしている会社の姿勢に期待感が高まったのではないでしょうか。『従業員と積極的に接点を持ち、ビジョンを共有しながら一枚岩になる』この姿勢は、現在社長としての立場にあっても変わることはありません。
急成長のターニングポイント
パチンコ業界の「2極化による淘汰」と「M&Aの活発化」は2012年の入社当時より予想できたことですが、同時に、この波が来る前に「核となるブランドを確立しなければ」と強く思うようになったのです。雇用や環境の改善を施しながら、事業計画である「年間1店舗ペースの出店」を進めていくなかで、後の急成長に繋がるターニングポイントは、2016年のアミューズ千葉店、2017年のアミューズ岩出店の出店にあります。アミューズという無名の会社が名乗りを上げるための重要ミッションでしたが、オープンは無事成功。1周年記念において、千葉店では6,000名を集客し、岩出店は3,000名を集客しました。時には色々な意味で「やりすぎ」になってしまうこともありましたが、「お客様から支持を得るまで徹底する」という意識は、両店の出店以降すべての店舗で大切にしており、今では『やりすぎなくらいが丁度よい』がキーワードになっています。この体験を得て、みんなの自信に満ちた顔や嬉しそうな顔を見て、会社や店舗に「誇り」を持てるようになったと実感できました。
一方で、アミューズ認知が広まっていく中で、見えてきた課題もありました。それまでは関西エリアを軸とした展開だったということもあって、各店の管理者およびスタッフへの“アミューズマインド”の落とし込み、意思疎通はスムーズに行えていたのですが、千葉店をはじめとした、本社から離れた「遠隔地の店舗」では、同じようなコミュニケーション手法は難しいということです。アミューズマインドの本質を理解した核となるメンバーを配置し、遠隔地の各エリア、各店のそれぞれで人材を育成、文化や風土を醸成させていくことは、今後も強く求められてきます。
M&Aによる事業拡大とその裏舞台
直近3年間の急成長は、2022年、2023年のM&Aによるところも大きいのですが、その際に最も強く意識したキーワードが『融合』です。事業継承した「株式会社悠煇」、「株式会社デ・マッセ」2社との関係において、親会社や子会社という関係ではなく「業務提携」の関係性をイメージしていました。
2024年10月には「株式会社悠煇」と「株式会社デ・マッセ」の融合法人『株式会社DAYブレイク』を設立しましたが、“名は体を表す”とおり、この法人名は2つの意図から成っています。デ・マッセ(D)、アミューズ(A)、悠煇(Y)の頭文字を組み合わせた「DAY」と、「壊す」という意味の「ブレイク」を融合。直訳すると「デイブレイク」は「夜明け」で、“3社の壁”を壊して、新たな未来を拓く、『パチンコ業界に夜明けをもたらす企業でありたい』という想いを込めています。
それぞれの文化や風土をリスペクトし合う、各社の優れた点を伝えあい、取り組むことで、相乗効果を生み出す。これは店舗運営における営業面や業務面に限らず、給与など各制度や働く環境整備にも適用させており、現場の意見を積極的に取り入れながら従業員満足度をさらに高めるように努めています。2024年に東京初出店した「アミューズ浅草店」はもちろん、各店舗のオープンを経験したスタッフが、今後のアミューズの歴史を築いていく人財に成長してくれることを期待しています。
中期計画“売上1,000億円”の達成
私が2013年に常務就任した際に「日本一“笑顔”と“ありがとう”があふれる会社」という想いを伝えたのですが、従業員のみんなには、まだ、現実味がなかったと思います。それが、2016年から約1年で1,000台以上の店舗を3店舗出店したことで、「本当に目指すんだ」という雰囲気が社内に広がっていったのです。
そして、中期計画の売上1,000億円を超えた今だからこそ、既存店のブラッシュアップを図っていきます。即ち、ユーザー来店頻度を各地域の各店で増やしていくこと。出店しても維持できなくなれば、既存店の負担が大きくなり衰退していくことは目に見えているからです。
支持率の高い店舗を増やし、ブランド力をさらに高めることができれば、M&Aを含めて出店ペースを上げられる。この循環を実現させるためにも「組織力」は重要課題で、その礎となる、従業員の成長は大きなポイントになりますが、その為の仕組みは整いつつあります。
毎年、店舗現場を含めて、従業員から見える現状についての評価や意見を吸い上げ、各制度やシステム改定を実施。2024年も10月度より新しい制度、体制に移行しており、「人的リソースへの投資」はより積極的に行う予定です。
未来を創るための“宿命”
全業種に共通することですが、“日本の人口減少”は、私たちのような店舗型事業をはじめ、企業の営みに間違いなく影響があると捉えています。ターゲットとなり得る人口自体が減っていくわけで、生き残りをかけた競争はより激しくなっていくはずです。“人々が何を選び、何を買うのか”、流行は時代の変化によって様変わりしますが、選ばれ続ける『未来を創る』と考えた際に、「如何にコストパフォーマンスを上げていくか」ということは、もはや宿命といえるでしょうか。例えば、現在の遊技機価格は率直に申し上げて高い。しかし、部材費や開発費の高騰も影響があると理解しており、現時点で大幅な改善は見込めません。ならば、『長く使える』ようにしなければならない。商品を選んで、仕入れ、育む、というプロセスの中で常にユーザーを想像できなければ、廃れる未来が待ち受けている、と、私たちは考えているのです。薄利多売を理想としつつ、『誰に届けていくのか』は非常に大切で、若い世代の支持をどのように得るか、どのようにアプローチしていくか、まさに試行錯誤とチャレンジの真っ最中です。
パチンコ業界を誇れる産業に
私が核としているテーマは「パチンコ業界を誇れる産業にする」ことです。そのためには現状を変えなければなりませんし、何かを変えるためには影響力が求められます。そして、影響力を持つためにはブランドを確立する必要があって、その第一歩が関東へのアミューズ出店です。
そして、その経験や反省を生かしつつ、将来ある「若い世代」に向けた、対外的なブランディングも積極的に行っています。例えば、現在も「パリ・サンジェルマンFC」とスポンサー契約しておりますが、サッカーというコンテンツ、当時であれば、メッシやエムバペというスター選手の認知度も含めると大変効果が大きいのかなと思っていました。
狙いは大きく2つあって、1つ目は世間へ対して、2つ目は同業・社内の従業員に対して、「こんなこともできるんだ」というアピール。『同業のみんなが自信と誇りを持てる』、『世間に最近のパチンコは変わったな』と少しでも感じてもらうことです。若い世代の人たちが「そこに行きたい」、もしくは「その業種に入りたい」という状態が、ブランディングが確立した瞬間だなと私は思っていて、これからのパチンコ業界の発展、繁栄に貢献したいと本気で考えています。
“楽しむことで楽しさの提供”ができる
ホール企業オーナーとして、様々な人とお会いしますが、昨今は「この方は働いていて楽しいのかな?」と感じることが増えたように思います。今の世の中、いろんな場面で、「チャレンジしない、できない」ことがあたり前になっている気がするのです。だからこそ、『ワクワク楽しめる環境』、やってみようと思える、『トライできる環境』が、より大切になってくるはずです。時代の変化を感じながら「楽しいこと」とか「嬉しいこと」をイメージする。行動に移して失敗したらアップデートして明日を迎えればよいと考えています。
私たちは、「イベント営業に依存しない」、パチンコの原点ともえいる、“毎日遊びに行きたい”、“誰かを誘って一緒に行こう”と思っていただける空間、『最も身近なアミューズメント』を今の時代に実現させることをイメージして、これからも楽しくチャレンジし続けます。
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