遊技機開発者の視点
「技術上の規格解釈基準」主要点を解説 ボーナストリガー(BT)がもたらすもの
文=荒井孝太(チャンスメイト代表取締役)/ text by Arai Kota
2024年8月23日に警察庁が改正した「技術上の規格解釈基準」を発表いたしました。こちらは警察庁のwebサイトにて公開されておりますので、誰でも確認することが可能となっておりますが、その文章は非常に分かりにくい内容となっておりますので、主な変更点を含めてできるだけ簡単に解説いたします。
もっとも大きな点は、パチスロの主にノーマルAタイプが対象となるボーナストリガー(BT)の搭載が認められるようになったことです。これは、「規定数固定機能」と呼ばれるもので、特定の指定したボーナス終了後に性能を変化させることが可能となりました。この機能により、「特定ボーナス終了後はボーナス高確率遊技状態」といった遊技性が実現可能となりました。オカルトでまことしやかに囁かれている、いわゆる「ジャグ連」のようなゲーム性が実際に可能になったわけです。
そのほかにもパチスロにおいては視認性確保の考え方から最近ではNGもしくはかなり制限がかかっていた、リールフラッシュ等の演出において自由度が増すことになりました。これにより、4号機時代のサンダーV等でよく見かけたリール演出が復活する可能性が高くなります。
次にパチンコに関しての変更点ですが、これはパチンコ機における「設定」に関する内容です。今現在、パチンコの設定に関してはお世辞にも流行っているとは言い難い状況下にあります。その理由に関しては様々な意見がありますが、大きな要因の1つとして、現状では、設定で変更が可能となる内容が確率(低確率と高確率)しかないという点が挙げられます。これが今回の改正によって、他のさまざまな数値を変更できる可能性が生まれました。ただし、詳細に関してはまだ未確定な部分も多く、今後徐々に内容が精査されて、機械開発に反映されていくと思われます。
最後にパチンコ、パチスロの両方に関する内容です。現行機においては搭載不可だったイヤホン及びBluetoothの搭載が可能となりました。これによりパチンコやパチスロの開発時における音への対応が変わるでしょう。なぜならパチンコ店に設置されている状況は、音を聴く環境としてはあまり良くありません。そのためメーカーは、「まずはユーザーに音を届ける」ことを主眼にサウンドを制作することになり、あえてかなり派手目な音を付けていることが多いのです。しかしイヤホンで聴くことを想定すると、派手な音ばかりにするとユーザーには「くど過ぎる」音になる可能性があるからです。
今回の「技術上の規格解釈基準」とは、遊技機の構造や性能等の技術上の規格について、その解釈を示した内容の改定です。すなわち遊技機規則(遊技機に関する法律)そのものは以前のものとは変わっておりませんが、その捉え方に少し変化が出たということです。解釈を示した内容とは言え、遊技機規則の一部となりますので、細かい内容まで詳細に記載されているわけではありません。そのため、実現に向けて進めていった場合に、「ここはどうなのか?」「このケースはどうしたらよいのか?」といったような問題が度々起こり、その都度、関係各位で解釈に基づいて話し合い等が行われて詳細を詰めていくことになります。すぐに対応が完了するわけではないのです。また改正内容によって、議論を重ねないといけないものと、比較的すぐまとまるものとの差があるのも一般的です。焦らず心待ちにしてリリースされるその日を待ちたいと思います。
荒井孝太
株式会社チャンスメイト代表取締役。パチンコメーカーで営業、開発を歴任後、2017年に遊技機開発会社チャンスメイトを設立。パチンコ業界をより良く、もっと面白くするために、遊技機開発業務の傍ら、ホール向け勉強会や全国ホール団体等の講演会業務など広く引き受けている。
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