コラム

「AIは使えない」と感じたら、対話の質を高める必要がある

仕事の効率を飛躍的に高めるAI活用
「AIは使えない」と感じたら、対話の質を高める必要がある
文=長山瑞季(パック・エックス)/ text by Nagayama Mizuki

ChatGPTをはじめとするAIツールの普及により、多くの人がAI(人工知能)との対話を日常的に行うようになりました。しかし、その使い方は人との対話とは大きく異なります。その違いを理解し、効果的に活用する方法について考えてみましょう。

AIとの対話は、一見すると人との会話に似ています。しかし、決定的な違いがあります。それは「命令の意図や背景への理解」です。同僚や部下に仕事を依頼する際、簡単な指示でも意図通りに実行されることが多いのは、相手がその命令の背景を理解し、必要な文脈を把握できているからです。

一方、AIは処理能力こそ高いものの、命令の暗黙の意図や非言語化された注意点を理解することはできません。例えばこれは、「まったく引継ぎを受けていない新人にメール一つで指示を出す」といった状況に似ています。どんなに優秀な新人でも、背景情報なしでは適切な対応は難しいでしょう。同様に、AIにも意図や背景を踏まえたうえでの具体的で明確な指示が必要不可欠なのです。

AIを使う際に特に難しいのが、「新しい企画を考えて」といったクリエイティブなタスクです。企画立案には、業界知識、過去の経験、トレンド感覚など、膨大な文脈情報が必要です。さらに、人間のプロフェッショナルには、無意識のうちに活用している暗黙知も存在します。これらを完全に言語化してAIに伝えることは、ほぼ不可能と言えるでしょう。

そのため、アイデア出しにAIを活用する場合は、最初の発想のトリガーとして使うことをお勧めします。まったくの白紙からの創造ではなく、ある程度の方向性や枠組みを示した上で、そこからの展開や改善案を求める形式の方が、より実用的な結果が得られます。

効果的な活用のために必要な三つの能力

私の経験上、AIを効果的に活用するためには、使い手側に以下の3つの能力が要求されると言えます。

  1. 明確な質問力
    目的達成に必要な情報をAIから引き出すため、具体的で的確な質問を組み立てる能力
  2. 情報伝達力
    AIが適切な応答を提供するために必要な背景情報や文脈を過不足なく伝える能力
  3. フィードバック力
    AIの回答に対して、改善点や評価を具体的に言語化して伝える能力

この状況は、デザイナーへの発注に似ています。「かっこいいデザインを」という漠然とした依頼では、思い描いた通りの成果物は得られません。フォントの種類やサイズ、使用する色のカラーコードまで細かく指定することで、はじめて理想に近づくのです。AIへの指示もこれと同様です。完璧な指示は難しくても、できる限り具体的に伝えることで、より質の高い出力が得られます。
また、AIの出力に対して具体的なフィードバックを重ねることで、徐々に理想に近づけていくことができます。つまり、AIがこちらの意図と異なる文章を出力した場合に、どのように修正したいか、なぜそれではダメなのかといったフィードバック、すなわち〈対話〉の質が重要になるのです。

終わりに

AIとの効果的な対話には、人との対話以上に明確で具体的な指示が必要です。しかし、それは決して特別なスキルではありません。相手の立場に立って、必要な情報を整理して伝える。この基本的なコミュニケーションの原則を、より意識的に実践することが重要なのです。

■長山瑞季
パック・エックスメディアチーム所属のコンテンツクリエイター。AIツールやPythonを駆使したデータ分析・自動化を得意とし、生成AI「Claude」「ChatGPT」「v0」を活用して企画立案やコンテンツ制作を行う。
本記事は『Amusement Business Answers』にて掲載中です。12月26日から28日頃にかけて、全国のパチンコホール各社(店舗・本社)へ順次お届けいたします。(無料送付)

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