コラム

【パチンコを取り巻く法律】デジタルコンテンツ賞品の可能性

「パチンコホール法律ハンドブック」監修者が解説
換金需要の低減化につながるデジタルコンテンツ賞品の可能性
文=三堀 清(弁護士)/ text by Mihori Kiyoshi

デジタルコンテンツの定義

デジタルコンテンツとは、デジタル形式で記録された文章・音声・画像・映像、ゲームソフト等の著作物がID(個人・団体識別記号)・QRコード等によりダウンロードされるものである。

風営適正化法の説明

風営適正化法では、景品(賞品)として、現金又は有価証券の提供禁止等の他、9600円以内の日常生活に供する「物品」を取りそろえて等価で提供しなければならないとの規制がある。これらは、パチンコが賭博罪となることを防止し、射幸性の昂進を防止するものである。そしてこの規制のため、〈物品〉そのものではないデジタルコンテンツを賞品とすることはできないとされている。

物品とデジタルコンテンツの比較

とはいえ、物品として販売される書籍や音楽・映画・ゲームを記録したディスク等は、冊子やディスクといった媒体の価値ではなく、コンテンツの価値によって流通していることは明らかである。これらのモノとデジタルコンテンツとの差異は、媒体を介さずに直接端末にダウンロードされるか否かという点にあるに過ぎない。この点から、物品である携帯電話クリーナーのおまけとして「着うた」のダウンロードを可能にするIDコードを同封したり、物品としてのカードケース内にスマホ用セキュリティソフトをダウンロードできるQRコードを封入した賞品も流通しているのである。

有価証券に関する考察

では、ID・QRコードを記載したカードを賞品として提供するにつき、これらのカードが、風営適正化法が提供を禁止する〈有価証券〉に該当するとされる懸念はあるのだろうか。

有価証券とは、「財産的価値ある私権を表章する証券であって、その権利の移転又は行使に証券の所持を必要とするもの」をいう。

ダウンロードにID・QRコードの記載されたカードの所持が必要となると、有価証券に該当するとされる余地が出てくるのである。しかし、これらのカードは、ダウンロード用のツールとしてのコードを記載しているに過ぎないから、コンテンツの使用を許諾する権利=「財産的価値ある私権」を表章したものではないと断言できる。このことは、コピーしたコードでもダウンロードが可能であることからも説明できる。

結論と提案

以上から、ID・QRコードを記載したカードは書籍やレコード・CDの類と同様に〈物品〉性がある一方で〈有価証券〉にも該当しないから、パチンコホールで賞品としての提供は可能ということになる。

では、一歩進めて、ホールのカウンターで、直接出玉数に応じたQRコードをスマホに読み込ませ、デジタルコンテンツを賞品として提供することはできないであろうか。残念ながら、このような無形の(物品性のない)賞品は、前述の風営適正化法施行規則上認められない。

とはいうものの、「法律」ではなく、「国家公安委員会規則」である風営適正化法施行規則36条2項1号イ及びハの「物品」という記載を「物品又はIDコード若しくはQRコード等デジタルコンテンツをダウンロードするために必要な符号」と改正するか、警察庁の「通達」である風営適正化法の解釈運用基準第17‐7に、「(4)施行規則第36条第2項第1号イ及びハに定める『物品』には、IDコード又はQRコード等デジタルコンテンツをダウンロードするために必要な符号を含むものとする。」等の一文を加えれば、これらは可能になる。

これにより、広くデジタルコンテンツを賞品として提供できれば、いわゆる換金需要の低減化につながり、世論の評価も好意的なものとなることは間違いない。

三堀 清

丸ビル綜合法律事務所パートナー(元・三堀法律事務所代表)、弁護士。元・PCSA法律分野アドバイザー。パチンコホールをはじめ企業関連の民事事件を手掛ける。風営適正化法及び廃棄物処理法関連業種の事案、閉鎖会社の内紛および債権回収、滞納管理費等の回収から派生したマンション管理に関する事案などを得意分野とする。

本記事は『Amusement Business Answers』にて掲載中です。12月26日から28日頃にかけて、全国のパチンコホール各社(店舗・本社)へ順次お届けいたします。(無料送付)

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