広告ターゲティングの功罪
「ターゲティング」に潜む落とし穴 現ユーザー向け訴求の限界と新たな一手

佐々木 亨
1980年3月生まれ。北海道白老町出身。室蘭工業大学卒業後、新卒で大手パチンコホール企業へ入社。20年のパチンコ業界勤務で店長・エリアマネージャーを経験し、2022年㈱CCGE NTERTAINMENTへ営業職として入社。現在はウェブ解析士の知見とホール勤務経験を融合させ、クライアント企業の事業成果への貢献を目指す。
近年、パチンコ業界においてもネット広告やSNS広告の活用が進み、広告運用における「ターゲティング」の重要性が広く認識されるようになりました。ペルソナ(詳細は前回記事を参照)に基づき限られた広告予算の中で、見込みの高いユーザーに絞って訴求できる点は、非常に大きなメリットです。
実際、パチンコ業界に限らず、すでに興味を持っている層を狙った広告によって、一定の効果が見込めるケースは多々あります。来店促進やアプリのインストールを目的とした広告において、興味関心を持っているユーザーに的確に情報を届けられるという点は、これまでのマス広告にはなかった強みと言えるでしょう。
しかし、ここで一つ考えておきたい落とし穴があります。それは、ターゲティングが一辺倒になることによって、逆に市場の可能性を狭めてしまうリスクがあるということです。
パチンコ業界はご存知の通り、長年にわたり既存のユーザー層に支えられてきましたが、少子高齢化やライフスタイルの変化により、新たなユーザーの流入が少なくなってきています。現ユーザーへの訴求だけでは、市場の縮小に直面せざるを得ません。
YouTube広告のチャンネル指定やX広告のハンドル指定は非常に利便性が高く有効な手法ではありますが、YouTubeのパチンコ・パチスロチャンネルを視聴しているユーザーは約800万人のうち何%でしょうか。「ユーザーの中でもコアなユーザーに向けた広告」と言えます。有効な手法の一つではありますが、一辺倒になると前述のとおり可能性を狭めているとも言えます。
ここで重要になるのが、「あえてターゲットを少し広げてみる」という視点です。ペルソナはヘビーユーザーに限りません。たとえば、「ゲームやアニメが好きな若年層」「趣味はゴルフとアウトドア、趣味活動をしない休日や仕事が終わってからパチスロを打つサラリーマン」「過去の遊技経験はあるが今は離れてしまっている休眠層」など。彼らは今はターゲティング対象に入っていないかもしれませんが、興味を引く切り口でアプローチすれば、再び関心を持ってくれる可能性があります。
こうした層に向けた広告を展開することで、現ユーザー以外にもリーチが広がり、将来の顧客育成につながるかもしれません。
この課題は、実はパチンコ業界に限ったものではありません。たとえば、新聞業界も若者離れに悩んでいます。多くの新聞社は、長年の読者層である中高年向けの紙面構成を続けてきましたが、結果として若年層の関心がさらに遠ざかり、部数減に拍車をかける状況になっています。しかし、最近では一部の新聞社がSNSで若者向けのニュースコンテンツを配信し、これまで接点のなかった層にリーチする試みを始めています。
同様に、パチンコ業界も「現ユーザーに刺さる訴求」と「新たなユーザーへのきっかけ作り」のバランスを意識した広告展開が求められているのです。
「北斗の拳」「エヴァ」「まどマギ」「AKB」等が初めて業界コンテンツとして登場した時、多くの新規ユーザーを獲得しました。業界全体で広告販促に取り組んだ成功事例です。当時と現在では消費者の行動が大きく変わっているため、当時と同じ手法で同じ効果を得ることは難しいですが広告ターゲティングの精度が高まる今だからこそ、「あえてコア層以外を狙う」ことも選択肢に入れてみてはいかがでしょうか。多少ターゲットの精度が落ちたとしても、未知の層にアプローチすることで、これまでになかった可能性が開けるかもしれません。
すでに取り組んでいる団体、企業、ホール(敬称略)も多くいらっしゃいますが、まだまだ供給不足ではないかと感じています。
ネット広告やSNS広告は、運用次第でどこまでもターゲットを広げたり、逆に絞ったりできます。だからこそ、今のターゲットが本当に最適なのか、立ち止まって考えてみることが、これからの店舗経営において大きな意味を持つのではないでしょうか。
文=CCG ENTERTAINMENT
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