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建築設計はホール経営にどんな価値をもたらすのか?

VISIONARIES’ TALK
建築設計はホール経営にどんな価値をもたらすのか?

本記事は『Amusement Business Answers』(2025 SUMMER Vo.1 No.3)に掲載中です。

東京・板橋区の老舗ホール『成増会館』のグループ店が、ビルの建て替えを経て、沿線最大規模のパチスロ専門店『EXA FIRST』としてグランドオープンしたのは2024年3月。同店を運営する三栄グループは、坂井田建築設計事務所(愛知県)にどんな期待をしたのだろうか。〔文中敬称略〕

取材・構成=田中剛(Answers 編集長)

重要なことはお客様の動線

柴﨑 成増駅前の弊社のビルを建て替えるためにパチスロ専門店『EXA』の営業を終了したのは2022年1月ですが、建築設計会社4社を呼んでコンペをしたのはその前年です。しかし、その後の市場の変化、事業計画の修正の可能性を考え、コンペでの提案内容よりも、「スピード」「柔軟性」「こちらの要望をくみ取ってキャッチボールを重ねながら作り上げてくれそうか」という点を重視して、業界内での評判も含めて判断したのが坂井田建築設計事務所でした。

長瀬 私は営業部で広告デザインを担当しているのですが、社長が坂井田建築設計事務所を選んでから店舗づくりの実務を引き継ぎました。

柴﨑 本当に重要なのはお客様の動線。これは失敗してはなりません。主役は〈お客様〉と〈機械〉。それを引き立たせる空間、〈機械〉まで導く動線を作ってほしかった。丸井専務(坂井田建築設計)もその点については、非常に考えられているのでお任せしました。

丸井 お客様の居心地や遊技機へのスムーズなアクセスを実現するために、動線は非常に重要だと考えています。それに加えて、メンテナンスや修繕がしやすいこと、コストパフォーマンスが高いこと。これらを踏まえたうえで、店舗のブランドイメージを形成するデザインを作る。そんな優先順位だと考えています。

3Dモデルでイメージを共有

『EXA FIRST』の正面入口から店内を見る

長瀬 『EXA FIRST』は1階はジャグラー専門フロアで、シニア層もしっかり集客したかったので、照度を高めにして木のぬくもりを感じられる空間。かつ、通路幅を広く取り、「街」や「公園」的な要素も採り入れています。店内には休憩できるベンチを各所に配置して、本物の街路灯を置きました。近年、遊技の客単価が上がっています。使う金額に見合った空間を提供したかったのです。それを丸井専務に伝えて形にしてもらいました。

柴﨑 経営者は、効率を考えたら1台でも多く遊技機を設置したい。でも、お客様の立場になって考えれば、駅前店だろうとゆとりがあったほうがいいに決まってます。どちらが正解かわかりませんが、長瀬の判断に任せ〈ゆとり〉を取りました。

丸井 ご要望をもとにパースをおこしますが、弊社ではその後に詳細な3Dシミュレーションモデルを作ります。島の長さや通路の広さやなど、図面やパースだけでは理解しにくい部分を来店者の目線で、動画で見ていただきます。この3Dモデルはイメージの共有に欠かせないものだと思っています。

長瀬 そうなんです。3Dで見たことで、「この設備がここにあったらちょっと歩行の邪魔だな」と修正しましたし、「この場所に立つと奥のメインの島がこのように見えるのか」と確認できました。パースだけでは気づけなかったと思います。

市場変化に対応できる計算されたシンプルさ

丸井 動線に関しては2階にあがってもらうことも課題でした。パチスロ専門店といっても、1階と2階はコンセプトが異なる2つのホールのようなものです。長瀬さんは、「店内の光を外に見せたい。でも大きなサイネージを設置すればパチスロ店ということは伝えられるから外から遊技機が見えなくてもいい」と。結果的に、入口正面に設置した大きなサイネージの右側に進むとジャグラーフロア、左へ進むと2階のスマスロ・AT機を中心にしたフロアです。

柴﨑 2 階の機種構成を考えて、「エスカレーターで〈高揚感〉を高めてほしい」と要望しましたね。娯楽ですから、「特別な空間」という気分になっていただく必要があります。

丸井 エスカレーター内を暗くしてSF映画の宇宙船内を思わせる空間にして、LED演出で動きを出しました。だんだんと気分を高め、2階に着くと広場のようなスペースから全体を見渡せ、奥にはメイン機種を置く円形島が見えるようにしました。店舗奥に導くために島上には円形サイネージを置きました。こう言うと、凝った作りのように聞こえるかもしれませんが、実は全体的に見るとシンプルな作りなんです。

エスカレーターで高揚感を高める

柴﨑 坂井田建築設計さんはメンテナンスのしやすさ、従業員にとっての使いやすさを考慮してくれました。それに加えて、部分的な改装への対応のしやすさを計算していますね。部分的な改装は、遊技機トレンドの変化などによって数年後に必要になると予想できます。正解なんてものはないんですが、いったん「これが正解かもしれない」というものを作らなきゃならない。けど、それで終わりではなく、その後も正解を模索し続けなければなりません。ですから、「大掛かりな工事をせずに変化させる」ということを前提とした店舗設計に仕上がっています。そういう意味で『EXA FIRST』は、いまのところ正解と言えるでしょう。

丸井 ありがとうございます。

坂井田建築設計事務所
愛知県名古屋市中村区太閤二丁目5番7号
TEL 052-414-5101
MAIL info@sakaidasekkei.co.jp
WEB https://www.sakaidasekkei.co.jp/

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