サイドビジネスの目
飲料自販機のトレンド変化 求められてくる小売店の視点
文=佐川寛之(サン商事)
非接触が日常となったコロナ禍では、冷凍自販機や物販自販機など、飲食事業者の新しい販売チャネルとして注目され、ビジネスとして導入、運用される事業者も増加しました。そして、パチンコ店で、あたり前のように目にするのが飲料の自動販売機。サービス提供に留まらず、『儲けを出したい』と考える店長がほとんどではないでしょうか。
自販機市場の現在
街角や駐車場、駅や公共施設など、あらゆる場所で見かける自動販売機。一般社団法人「日本自動販売システム機械工業会」によれば、日本国内における自販機の普及台数は2023年末時点で約393万台、台数占拠率が最も高い飲料自販機は約220万台で、自販機の数だけビジネスが成立しているといっても過言ではありません。
しかしながら、自販機の普及台数は2000年の560万台をピークに、以降は減少傾向にあるといいます。2023年時点で約393万台ですから、ピーク時からは約168万台減少しているのです。その背景はさまざまな要因が考えられますが、何より、『売れる場所が減少した』、『設置できる場所が減った』ことにあるでしょう。時代の流れと共に、社会経済は移り変わり、物価、消費税、人々の消費マインドやニーズ、トレンドも変化しています。例えば、コンビニの店舗数増加と、セブンコーヒ―などの格安で本格的なカウンターコーヒーの出現は飲料自販機にとって、脅威だったといえます。人手不足による、自販機オペレーションへの影響も考えられますが、外的要因によって、設置できる場所が減ってきていることを踏まえれば、普及台数が減るというのは必然ともいえるかもしれません。
そもそも、自販機が近くになかった場合に、『わざわざ自販機を探してまで買いに行く』という人は稀なはずで、自販機で飲料を購入するシーンは、「欲しいと思った時に近くにあった」が大前提になります。このような特性から、これまでの飲料自販機ビジネスの主流は「場所貸し手数料」で儲ける、“不動産事業”に近いイメージだったと思います。しかし、再三になりますが、自販機市場は縮小しているのが現実で、表現を変えると『買いたいときにすぐに買える』という自販機特性だけでは、商品は売れなくなった、ともいえるでしょう。
移り変わる飲料自販機トレンド
パチンコ店で飲料自販機の設置を考えた場合に、『空きスペースに設置して手数料で儲けがでれば』という背景から、『設置や運営のコストはかけたくない(かけられない)』というようなお声を多く伺ってきましたが、“場所貸し”での契約がほとんどでした。自販機の設置から販売業務全般をメーカーや業者が担当する、「フルオペレーション契約」による“ナショナルメーカー自販機”の設置が特に目立ちます。ナショナルメーカー自販機とは、飲料メーカー専用自販機のことです。大手飲料メーカーの新商品を販売できるなどのメリットがある一方で、『該当メーカーの商品しか販売できない』、つまり、ロケーションに細かくあわせた商品ラインナップにすることが難しいのです。自販機ビジネスにとって、人が多く行き交う、人が集うようなロケーションに設置するということは、今も昔も変わらないのですが、自販機の普及台数の減少を踏まえても、多様なニーズに応えていく必要性が高まっていることは容易に想像できます。具体的に申し上げれば、ロケーションごとで、“自販機あたりの提供価値”を高めていく必要があるのです。また、ナショナルメーカー自販機の場合、販売価格が『定価に固定される』といった条件もあります。物価高によって、飲料の値上げが行われていくなかで、“安く販売できない”という点も不自由に感じる要素のひとつです。
自販機オーナーになるメリット
近年の飲料自販機で、設置が徐々に目立つようになってきたのが、売れ筋商品集約型の「ミックス機」です。この自販機は『さまざまなメーカーブランドを取り扱える』ため、ロケーションやユーザー層にあわせて、商品を販売することが可能なのです。また、自販機オーナーとして運営することができるので、『販売価格を自由に設定できる』のも利点です。自販機市場は現在、「ナショナルメーカー自販機」から、「ミックス機」へとトレンドが変化しつつありますが、“小売業の店舗”として発想していくことが大切になってきます。要は、自販機自体がユーザーとの接点であると捉えていくわけです。
パチンコ店の場合はパチンコ、パチスロ遊技機といった商品を設置した営業、集客が本質なわけですから、『自販機を設置できる空スペースは限られてくる』はずです。その限定されたスペースの特徴に応じて、商品ラインナップをどのように選定していくのか、と考えていくことになります。パチンコフロアなのか、パチスロフロアなのか、通常貸スペースなのか、低貸スペースなのか、休憩スペースなのか、喫煙スペースなのか、などによって、市場における“売れ筋商品”や“人気商品”という点のみにこだわらずに、どのようなユーザー層が店内のその設置箇所を主に行き来するのか、という視点が必要で、『顧客導線にあわせて売り場を最適化していく』ことが求められてくるのです。
私たちサン商事では、飲料自販機の設置事例が豊富にありますが、パチンコ店のミックス自販機もご用意することができます。これまでのノウハウから、自販機の設置診断も可能なので、自店の空きスペース利用やナショナルメーカー自販機からミックス機への切り替え検討などでお悩みがございましたら、お気軽にご相談ください。
左から長谷川副所長、佐川代表
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