動画クリエイターの視点
【集客動画のポイント】ホールのSNS動画活用成功には「感情をどう揺さぶるか?」が重要
文=橋本大志(動画クリエイター)/ text by Hashimoto Hiroshi
今や多くのパチンコホールが自社のアカウントを各種SNSに持ち、各々種々多様な運用をおこなっているが、その成否ははっきりと別れている。
「技術」と「感情」が握る、SNS運用の分岐点
SNSの中でもYouTube、TikTokのプラットフォームの勢いは目覚ましく、他業界も含めこれら縦型動画プラットフォームは自社サービス広告のインフラと化している。しかし、これらの動画プラットフォームは扱いが難しい。気軽に撮影できるものの、広告価値のある量のインプレションを獲得するには、「アルゴリズム理解」、「トレンドの恒常的なキャッチアップ」、「プラットフォームのデフォルトサービスの枠を超えた制作技術」、「投稿頻度を確保できる十分な企画立案能力」等が不可欠だ。これらは運用に必要な「技術」と纏められる。
運用の成否はこれら技術に左右される上に、ホールの集客に寄与する運用となれば、単にインプレッション量を稼ぐのみならず、アカウントコンセプトと動画の企画が「ホールに行ってみたい」と感情を揺さぶるものでなければならず、運用者のセンスにも依存する。
すなわち、ホールSNS動画活用で押さえるべき2点は「技術」と「感情」だ。技術は今や普遍であるがゆえに、動画活用を成功させる上で研究すべきは感情をどう揺さぶるかが鍵となる。
特にTikTokは制約が多い。上手く活用すれば莫大な量の露出がおこなえるが、パチンコ遊技の様子を映せばアカウントが停止されるリスクがあり、「ホールに行ってみたい」という感情を揺さぶるために安直に遊技機を使用できない。
成功事例:『クラブイーグル』に見る戦略
弊社が企画・制作した北海道のホール『クラブイーグル』の事例を紹介したい。当アカウントは「普段はホールで一生懸命働く女性パチンコ店員がダンスにチャレンジする」という動画に特化しており、遊技機はほとんど登場しない。これで1本あたり平均20万再生を生みだす。スタッフが踊る動画はプラットフォームに数多くあるが、当アカウントが他と大きく異なる点は、登場人物のキャラクターにフォーカスしている点だ。動画を見るだけで登場人物の好みや趣味嗜好が伝わり、継続して見ると、「この頑張っているスタッフに会いにホールに行ってみたい」という感情が喚起されるように作っている。
「ダンスにチャレンジ」という動画ではあるが、ダンスを見せるのが目的ではない。会ってみたくなるようスタッフの魅力を最大限に表現するのが真の目的で、その表現のツールとしてダンスジャンルを使っている。そのため、ダンスのプロフェッショナルである必要はない。先述した技術によってインプレッションを稼げるトレンドを把握し、「会いに行きたい」と思わせる感情の操作を動画表現でおこなえれば、お客様が店に足を運ぶには十分な動画運用となる。
遊技機なしでも伝わる、ホールの新しい魅力とは
ホールスタッフの魅力的な表現方法を追求し、「お店に足を運びたい」という感情を揺さぶる方法はダンスに限らない。ホールスタッフの実態は、もはや旧時代の粗悪な印象とは大きく違う。彼ら、彼女らの魅力を、一般客にどう伝えるかという〈感情の揺さぶり〉の企画力こそが動画活用の成功の鍵なのだ。「一生懸命である」、「親近感がある」、といった漠然としたイメージでも構わない。これらを最大限に魅せつつ、SNS上で再生されやすいトレンドに乗せることで、ホールの動画活用は量・質共に意味のあるものとなる。一度、『クラブイーグル』の動画を見てほしい。そこに映るスタッフはとても魅力的だ。同店のYouTube、TikTokアカウントは動画活用のヒントとなるはずだ。
橋本大志
京都大学大学院農学研究科修了。バークレイズ証券を経て、「低迷するパチスロ業界を再び盛り上げる」というビジョンのもと2020年株式会社TripleHを創業。自身もインフルエンサーとして活動。日々激動するSNSトレンドを分析力と発想力で攻略。自身が企画、製作に携わった動画の多くが100万回再生を超える。
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