飛躍できる状況は整っている
一般社団法人 日本遊技関連事業協会 会長
西村拓郎 氏
──2020年8月に会長に就任されてから、丸4年が経過しました。その間で最も印象深いことは何でしょう?
西村 ひとつに絞るのは難しいのですが、やはり、2021年1月に庄司孝輝前会長がお亡くなりになったことです。私が会長に任命されてまだ半年くらいしか経っておらず、色々と教えていただいている最中のことでしたから、大変なショックを受けました。
──業界に衝撃が走ったことをよく覚えています。
西村 その次は、「時代に適した風営法を求める議員連盟」の名称が2022年に「遊技産業議員連盟」に変わったことです。あの時は、議連の田中和徳会長から突然、発表があって驚きました。我々業界側の誰かがアプローチしたのだろうと思って色々な方に聞いてみたのですが、そうではなく、議連の先生方からのご提案だったことがわかりました。「風営法という括りではなく、正面切って遊技産業と言ったほうがいい」と我々の産業を認めてくださったのです。ですから、政治と向き合うスタートラインに立てたのだと、背筋が伸びる思いがしました。また、2024年6月には業界13団体の合同祝賀会があり、パーパス「遊びの力で、心を元気に。」が発表されました。このとき遊技産業議連から出席された先生は約60名。これほどまでに多くの先生方に出席していただけたのは、期待の表れだと感じるとともに非常にありがたかったです。
──行政関連ではいかがですか?
西村 「広告宣伝」「賞品提供」「貯玉・再プレー」という3つの分野のガイドライン制定が大きかったですね。行政から前向きに我々を評価いただけたと素直に嬉しく感じました。行政から、約束を守っていると仰っていただいたので、我々もそれにしっかりと応えていかなくてはと、改めて気を引き締めました。自分たちで作ったガイドラインですから、是が非でも守り、今後も信頼され続けなくてはなりません。
ここ2年で風向きが大きく変わった
──ここ1年くらいで、業界が“良い方向”へ進んだと思われることはどのようなことでしょう?
西村 先ほどの話と少し重複しますが、行政から認めていただいたこと、後押ししてくださるようになったことで、だいぶ風向きが変わったと実感しています。各論ではなく総論として、これ自体が非常に大きなことであり、ほぼ前例がないことだと思います。「健全化」「近代化」「適正化」が日遊協の創設以来の旗印ですが、「健全化」を謳っているということは、当時は健全ではなかったということで、そういう面があったことも否めないでしょう。しかし今は、脱税も不正遊技機もほとんどありませんし、車内放置については駐車場の見回りによる防止活動が徹底され2017年以降、死亡事故はゼロです。だからこそ、行政からの信頼を得られたのでしょう。
──では、業界の喫緊の課題は何でしょう?
西村 課題はいろいろありますが、私は、「キャッシュレス化」だと思います。キャッシュ“レス”と言うと語弊があるかもしれないので、「電子マネー化」と言うほうが適切でしょうが、これは、ユーザーの利便性向上だけでなく依存問題対策として非常に有効な手段なのです。まず利便性に関してですが、世界的に見ても現金しか使えないのは時代遅れです。「ユーザビリティーに欠けているから、ホールに行かなくなった」「パチンコをしようと思ったときにたまたま現金の持ち合わせがなかった。ATMでお金をおろすのは面倒くさい」という人が、今後増えてくるでしょう。電子マネー化できれば集客力がアップするに違いありません。一方の依存問題対策に関しては、現金の場合、1日に使える金額を制限するのは難しいですが、電子マネーなら設定額に達したときに「今日はもう、ホールでは使用できません」という制限が可能です。だからこそ日遊協では、もう何年も実現に向けて情報収集し検討に動いているのです。行政とも話し合っていますので、可能な限り早く形にしたいと思っています。
──電子マネー化以外の課題は?
西村 賞品のデジタル化です。電子マネーで遊べるようになったとしても、獲得した玉やメダルと交換できる賞品が有体物のみというのは、いまの時代には合いません。例えば音楽を聴くとき、昭和ならレコード、平成ならCDがメインでしたが、令和のいまはダウンロードです。デジタルコンテンツを賞品として提供できれば、楽曲以外にも様々なものが提供できるはずで、賞品も多様化できます。ホールにとってもファンにとってもメリットがあるものですので、行政と相談しながら推進していく所存です。
──最後に、2025年の抱負をお願いします。
西村 現在は全体的に、すべて“良い方向”に進行していると思います。行政から取り締まられるような事案もほとんどないので、いわゆる行儀のいい業界・産業になったと感じます。「健全化したんだから、もう日遊協なんてなくてもいいんじゃないか」と笑い話にできるほどです。ただ、世間が抱いている業界のイメージはまだまだ悪いでしょう。いまだに、ゴルフ場の会員になれないとか、不動産を借りられないとか、いわれなき不都合を強いられることがあります。性風俗と混同される方もいるので、田中和徳先生をはじめとする遊技産業議連の先生方も「一線を引くべき」と仰ってくれています。2025年は、そのあたりが改善されればより良い方向に向かうと思います。行政からは「何かあったら相談しに来て」と言われていますので、ありがたく受け止め、さらに自浄努力を続けて各種ガイドラインを遵守し、日遊協としても業界全体としても、一層飛躍できる年にしたいですね。
文=古内利治(遊技日本編集部)
写真=田中剛(本誌エディター)
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